オシャレなウェア
「あの人オシャレだよね。」
「そうだよね、かっこいいよね。」
学校や職場で女子たちがこんな会話をしているのを聞いた事はないだろうか。
「自分もそんなふうに言われたい。」
あなたもそう思っていることだろう。
しかし、私は気付いている。周りの友達には隠せているつもりだろうが、私を騙すことはできないのだ。
せっかく走るなら、かっこいいウェアを着て走りたい。
オシャレなランナーならそう思って当然だ。
ところが、オシャレというのはなかなか難しい。
最近のファッションのトレンドは「オシャレ過ぎないこと」だそうだ。
これは言い換えれば「オシャレしない方がオシャレ」ということにもなる。
一方、ブランド品を着たり、周りと違う格好をすること、つまり今までは「オシャレ」とされていたことが「ダサい」とされる傾向にある。
かといって、ダサいウェアがオシャレなわけでもない。
「オシャレ過ぎない」ことがポイントであり、あくまで「ノーマルでシンプル」な格好がオシャレなのだ。
じゃあ全身ノーブランドのウェアを着ればいいのかというと、そういうわけでもない。
ワンポイントでオシャレなアイテムをさりげなく取り入れる程度がいいそうだ。
この「さりげなく」というのが最も重要なポイントだ。
「なんだ、結局こだわっているじゃないか」と言いたくなる。
しかし私はあることに気付いてしまった。
私の持っているウェアは、実はオシャレなのではないかということだ。
確かによく考えてみれば私はいつも地味なウインドブレーカーを着ている。
まさにノーマル&シンプルそのものだ。
しかし、それだけではない。
よく見ると「ナイキ」だ。
バッグも至ってシンプルだ。
しかし、よく見ると「プーマ」だ。
さりげなさが際立っている。
レース用シューズだって、至ってシンプルだ。
特に意識してノーマル&シンプルを集めたわけではないのに、これだけオシャレとされているウェアがあるということは、今日現在において私は「めちゃくちゃオシャレ」と言うことになる。
速い人はレースのときにランシャツ×ランパンを着ていることが多い。
私ももちろん持っている。
ランシャツ×ランパンはいかにも速そうだ。
しかし、私はオシャレだ。
時と場合によってはさりげなく速そうなウェアを着ることにしている。
このTシャツがやたらとさりげない。
これもよく見ればさりげなくナイキであることに気付いてもらえるだろう。
ランシャツ×ランパンの選手が、私のこのさりげないウェアに油断して「なんだこいつ、速いのはどうせスタートだけだろう」と自重してそのまま追いつけなかったことは少なくない。
ノーマル&シンプルがいかにすごいかが分かっただろう。
しかし、安心はできない。
近い未来、このノーマル&シンプルなウェアがダサいと呼ばれる日が来てしまうかもしれない。
つまり「オシャレをし過ぎないオシャレ」をしないのがオシャレだとされる時代が来るということだ。
そのときは、この謎の変なウェアを着ようと思う。